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Channel: 欲望日記
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波乱の夜

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そして、決裂―。


「2人に話がある。」

そう言ってE.T.に突然呼び出されたのは、8月12日(金)のことでした。

不安が暗雲のように胸に広がるのを感じながら、仕事のあと恵比寿駅で
塚本くんと待ち合わせ、タクシーを拾って広尾へ。

フレンチのお店、『レゼルブ・ド・ヒラマツ』
一見フラワーショップにも見える緑あふれるエントランスをエレベーターで2階に上がると、
白を基調とした柔らかいフェミニンな空間が広がっています。

期間限定の「桃のフルコース」をいただきながら、ぎこちなく3人が向き合いました(+o+)



「で、どうです? 2人の新生活は。」

シャンパンで乾杯すると、さっそく切り込んできたE.T.(><)!!
ここは変に口ごもったりしない方が得策だ、ととっさに判断した私は、ニコヤカに答えました。

「ええ。ほんとに塚本くんが来てくれて助かってます!なんてったって家賃は半分になるし、
やっぱり男の人がいてくれると、防犯上安心ですよね。 …塚本くんなら、私に対しても
『安心』ですし(笑)☆」

「そうですか。」

…E.T.、目が笑っていません。 ひえ~っ(笑)

ひんやりとした空気の中、アミューズ(前菜)に続いてコチ(という魚)のソテーが。
しばらくの間、ナイフが時おりお皿にぶつかる音だけが響きました。

「塚本が迷惑をかけていませんか? 休みの日はどうしてるんですか?」

沈黙を破ったのはE.T.。

「お互い昼間は別々に過ごしているし、休みの日も予定があればそれぞれ好きに動いてる
って感じで。何回か、横浜周辺を案内してあげたんだっけ?」

ナイスコンビネーションを期待して振ったのに、彼の答えは

「二人で花火とか海、いっぱい行ったよ。」


おいこら待てーーーーー(怒)!!!!
それじゃ私がただの『嘘つき女』になっちゃうだろうがぁーーーー!!!

やおらパンにバターを塗りたくり食べ始める私(笑)


「先週末、僕の誘いを断ったのは、それでだったのか…。」

E.T.の目が、一瞬鋭く光りました。

塚本くんはそれには答えず、屈託ない様子でフォアグラをつついています。

「あ、あの、○○(E.T.)さんも今度ぜひ横浜に遊びに来てくださ…」

気まずい雰囲気を取りつくろおうとしたら、

その必要はないでしょう。」

ものすごく冷たくさえぎられ、一気に酔いが覚めました(++)

「…で、君はいつまでなおさんのところにお世話になるつもりなんだ?」

えっ?

同時に声を上げる塚本くんと私。

「打ち合わせは今後、全部恵比寿の事務所ですることにした。僕の自宅に誰かが来ることはもうない。」

「…だから、何?」

「人が来て落ち着かないのが嫌だったんだろう? もう大丈夫だって言ってるんだよ。」

「ちょっと待って。 言っておくけど俺、○○さん(E.T.)のところへ行く気はないから。」

ワイングラスを置くと、きっぱりと塚本くんは断言しました。

「俺だって家賃ぐらい払えるしね。○○さん(E.T.)の世話になる必要はないよ。」

「この間のことをまだ怒っているのか?そんなに自立したけりゃタダで住めとは言わない、
私に対して家賃をきっちり払ってもらおうか。」

どうだと言わんばかりに腕を組んだE.T.に対して塚本くんは

「家賃を払うのは大前提さ。…その上で俺は、『横浜』に住みたいんだよ!」

きれいなサックスブルーのジャケットを着た肩に力が入るのが分かりました。

それを聞き、さっと朱を注いだように赤くなるE.T.の顔。

「そんなに、そんなになおさんと暮らしたいのかお前はっ!?」

激昂するあまり、声が上ずっています(@o@!!

『なおさんと』 だなんて、ひとことも言ってないだろ~!?」(←ちょっとショック)

塚本くんはうんざりした顔でナイフを投げ出し、椅子にもたれてしまいました。
私はE.T.の見せた激しい嫉妬にどうしていいか分からず、おろおろするばかり(><)

「―とにかく、俺は当分横浜で暮らすよ。もちろん、家賃もちゃんと半分払うしね。」

「家賃、家賃って強情な奴だ。僕へのあてつけか?なおさんに迷惑だとは思わないのか!?」

「なおさんが『迷惑だ』っていうんなら、すぐに出て行くよ。」

ぐっと身体を低くして、一歩も引かない塚本くん。
一斉に二人の視線が私に注がれます(@o@)!!

「わ、私は…。ほんとに、迷惑だなんて…」

目の前に置かれた生ウニのパスタは、もうすっかり冷えていました。

なおさん。」

E.T.が私に真っ直ぐ向き直りました。

「あなたも、もうちょっとよく考えたほうがいいですよ。そりゃ大変なことがあってお気の毒だとは
思います。けど、同居人なら誰でもいいっていうのは、おかしいでしょう。…ご存知だとは思うが、
私と塚本はそういう関係だ。 あなたに他意はないとしても、僕は平静ではいられない。」

「…。」

返す言葉が見つからず、うつむく私。

「―ちょっ、それはおかしいだろ!? 俺がなおさんに住まわせてくれって頼んだんだから!」

E.T.は声を荒げる塚本くんを手で制し、言葉を続けます。

「…仮にもし、あなたが塚本に好意を持っていたとしたら、それは不幸な話だ。あなたの願いは叶うことはないのだから。 なおさん、あなたも実りのない関係にかまけて将来を見失うほど、もう若くはないでしょう?」

―あまりにストレートな非難に、私は驚いてE.T.を見つめました。

実りのない関係―。 決して交わることのない平行線の先を夢見ている、馬鹿な女―。

泥棒猫、そう罵倒されている気すらして、私はものすごい恥ずかしさに襲われました(><)



「…○○さん(E.T.)のおっしゃる通りですね。塚本くんと住むべきじゃありませんでした。
○○さんの気持ちも考えずに、自分の都合ばかり…。 ほんとにごめんなさい。」

居たたまれなくなった私はそう言って、お店を飛び出してしまいました(><)

なおさんっ!! 待って!!

塚本くんの声を振り切って―。




ひとり駅へ向かうタクシーの中、頭の中をさまざまな思いが駆け巡ります。


やっぱり無理なんだ。

奇跡なんて、起きっこない。

一緒にいられるだけで幸せ、なんて嘘。

私を、女として見てほしかった。

塚本くんを、E.T.から奪いたかった―。

E.T.に突きつけられたのは、目をそむけてきた自分の真実の姿でした。
そのあさましさと恥ずかしさに耐え切れず、こうして逃げてきてしまった―。


合わせる顔がない―。 
E.T.に対しても、塚本くんに対しても。


その夜、私は家へ帰りませんでした…。


つづく

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